情報更新日:2014.05.07
さいべざわいせき
サイベ沢遺跡は,常盤川左岸の桔梗台地に縄文前期から中期末まで営まれた大規模集落跡で,北海道南部円筒土器文化の標識遺跡として古くより知られています。平成25年度は常盤川総合流域防災工事に伴いJR沿線区域の調査を実施しており,常盤川寄りに竪穴住居跡などの遺構を検出しています。現況は畑地であり,遺物包含層の大半は削平されています。
縄文時代中期中頃から後半にかけての竪穴住居跡13軒,土坑28基,落し穴5基,焼土1か所を検出しています。住居跡のうち中期中頃のものは5軒あり,特徴的な住居跡としてはサイベ沢Ⅴ式土器の埋甕炉(うめがめろ)を中央に設置したものや長軸約6mの隅丸長方形の住居跡などがあります。後者の住居跡の床面には外周マウンドを伴う柱穴状ピットや貼床を伴った2か所の地床炉,倒立土器を含む複数個体のサイベ沢Ⅶ式土器や各種の石器などがみられます。覆土からも多量の遺物が出土しており,住居が使われなくなった後は廃棄の場として利用されたことがうかがえます。中期後半の住居跡は7軒あり,比較的深く掘られているものが目立ちます。これらには榎林式土器を伴う事例が多く,特徴的な住居跡として,長軸端に地床炉と対をなす皿状のピットを設置しているものがあります。これらの住居跡には重なった周溝や切り合った炉跡・柱穴が多数みられることから,繰り返し拡張工事を行ったことが推察できます。土坑は,特徴的なものとしてフラスコ状土坑が2基,長径1m前後の長楕円形土坑・隅丸方形土坑があります。後者の多くは,覆土が埋戻しであり,遺物を伴っていません。北側で検出したフラスコ状土坑の坑底からはサイベ沢Ⅶ式土器1個体と敲石が出土しています。
調査状況
竪穴住居跡完掘(PD-12)
遺物は,その殆どが遺構から出土したもので総数は6,705点です。このうち縄文中期の土器が大多数を占めます。ほか,土器ではごく僅かに縄文早期の貝殻文土器がみられます。石器類として,剥片石器は尖頭器類,石錐,ナイフ・スクレイパー類が,礫石器では石斧,敲磨類,石錘,砥石・石皿・台石類などがあります。ほか,スタンプ状土製品・有孔軽石製品が中期中頃の住居跡から,有孔土製円盤・岩偶状石製品が中期後半の住居跡から,それぞれ出土しています。
遺物出土状況(PD-1倒立土器)
出土した土器(縄文時代中期)